5.まとめ
超電導電磁推進船「ヤマト1」の実海域における航走実験の結果、超電導電磁推進装置が船舶の推進装置として使えることが実証された。しかし、その実用化のためには、高磁界・大口径超電導磁石の開発を始めとして、励磁システムや冷凍システムなど開発すべき技術課題が数多くある。
本年度は、それらの課題の内、「Nb3Sn巻線技術の開発」と大電流用「Nb3Sn永久電流スイッチの開発」について調査研究を行った。「Nb3Sn巻線技術の開発」では、Nb3Sn超電導線材を設計製作して線材の特性試験を行い、平成7年度に製作した超電導コイル巻線機により実験用コイルを製作し、Nb3Sn超電導線材の巻き線法の調査を行った。
また、「Nb3Sn永久電流スイッチの開発」では、10,000A級大電流・高安定性永久電流スイッチの開発を目指し、平成7年度にはその第一段階として1,000A級「Nb3Sn永久電流スイッチ」の製作を行ったが、その第二段階として、3,000A級「Nb3Sn永久電流スイッチ」の開発を行った。本事業における成果は次のとおりである。
1)Nb3Sn巻き線技術の開発
高磁界用超電導コイルに用いられるNb3Sn超電導線材の巻線による性能劣化の原因を究明するため、Nb3Sn超電導線材を設計製作して線材の通電試験等の特性試験を行い、Nb3Sn超電導線材の性能を明らかにした。
また、昨年度製作したコンピュータ制御による超電導コイル巻線機を用いて、Nb3Sn実験用コイルの巻線を行った。今後、米国カリフォルニア大学ローレンス・バークレー研究所の高磁界発生装置を用いてコイルの性能試験を行う予定である。これらのことにより、形状および巻線条件等を変えた種々の実験用超電導コイルの製作および高磁界実験装置による通電試験を効率良く行うことでき、Nb3Sn超電導コイルの性能劣化原因の究明が促進される。
2)Nb3Sn永久電流スイッチの開発
永久電流スイッチの大電流化および安定性の向上を図る目的で、Nb3Sn超電導線材を用いた3,000A級永久電流スイッチの設計製作を行い、通電試験および加振試験等を実施した。その結果、静的通電試験(磁界:1.0テスラ、通電電流:3,000A)および加振試験(磁界:1.5テスラ、通電電流:2.000A、周波数:5〜33Hz、振幅:1mm)において仕様とおりの性能確認ができ、大電流通電におけるNb3Sn永久電流スイッチの安定性が確認できた。
また、仕様を上回る過酷な加振試験(磁界:1.5テスラ、2,000A、周波数180Hz、振動加速度:40G)においても十分な安定性があることが確認できた。
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